生活保護受給中の自己破産 そのメリット・デメリット

借金を抱えて返済が困難になった場合、債務整理には大きく分けて「任意整理」「個人再生」「自己破産」という三つの方法があります
その中でも、生活保護を受給している方が債務整理を検討する際は、実質的に自己破産一択となることが多いと言われます
なぜなら、任意整理や個人再生では負債はゼロにはならず(月々の支払が減額されたとしても)返済は続きます
生活保護の月々の給付金はあくまで生活のためであり、生活保護費から借金を返済するのは認められないのです

この点についての詳細は 生活保護と債務整理の関係 自己破産が唯一の選択肢となる の記事を参照してください

自己破産は裁判所を通じて、借金返済の義務を免除(免責)してもらう制度です
これにより借金をゼロにすることができ、生活を再建するチャンスが生まれます
しかし、自己破産には大きなメリットがある一方で、いくつか知っておきたいデメリットや注意点もあります
ここでは、生活保護受給者が自己破産をする場合に生じるメリットとデメリットを比較検討して「自己破産をすべきかどうか」という問題について解説をします

生活保護受給中でも自己破産は可能

はじめに押さえておきたいことは、生活保護を受給している状況でも自己破産は可能だということです
借金の返済が困難な状況にあって収入や資産が十分でない場合は、裁判所に破産申立てを行い「免責許可」が下りれば借金の返済義務がなくなります
これは、法律で認められた正当な手続きであり、生活保護を受けているかどうかは自己破産をして免責が認められるかどうかには障害になりません
ただし、自己破産・免責決定の手続には一定の要件を満たしているかどうかのチェック(審査)があります
たとえば、浪費やギャンブルなどによる多額の借金には「免責不許可事由」が存在し、裁判所が免責を認めない場合があります
ただし、事情を考慮して裁量免責が下りるケースも少なくないため、まずは弁護士等の法律専門家に相談してみることが重要です

生活保護受給者が自己破産をするメリット

借金返済の義務がなくなる

自己破産の最大のメリットは、借金の返済義務が事実上ゼロになることです
生活保護を受給している方は、収入が最低限度の水準しかなく、日々の生活費を確保するだけでも苦しい状況にあります
借金の返済を続けていると、生活保護による支給金を返済に回さなくてはならないことになります
しかし、これでは本来の生活維持がままならなくなり、生活保護の趣旨に反することになります

自己破産により免責を受けることができれば、借金返済への不安から解放され、生活を立て直す道が開けます
生活保護は「最低限の生活の保障」だけでなく、自立を目指すための支援という側面も持っています
返済の必要がなくなり、生活保護の給付を将来の自立や健康維持に使えるようになることで、より早く社会復帰を目指せる可能性が高まります
生活保護を受給している方が多くの負債を抱えている場合、自己破産による負債の免除は積極的に推奨されるものであるといえます

精神的な負担が軽減される

借金を抱えていると、常に「返済日に追われるストレス」「督促状や取り立てへの不安」など、精神的な負担が大きくのしかかります
特に、生活保護を受給しているほど困窮している場合には「返せるあてもないのに、どうしよう……」という強いプレッシャーを感じる方が多いかもしれません
このような思考にいたるのは人の心理として当然だと思います
自己破産により借金が整理されれば、そうした取り立てや返済のプレッシャーから解放され、精神的な安定を得ることが期待できます
精神的な安定は、経済的な更生・再出発や健康の回復にもつながる重要な要素です

返済計画についての心配が不要

自己破産以外の手段、たとえば「任意整理」「個人再生」では、債権者との交渉や裁判所を通じた計画案の提出など、一定期間にわたる返済計画が必要となります
生活保護受給者の場合、そもそも返済に回せる余裕がないため(生活保護費はあくまで生活を維持するために必要な限度のお金)、こうした計画を実行することは非常に難しいと言えます

自己破産では、裁判所が免責を認めてくれれば返済の義務が無くなります
手続の後に長期的な返済計画を組む必要がない分、手続きが完了すれば早期に借金問題を解消できるのが大きな利点です

生活保護受給の場合の、自己破産のデメリット

財産の処分や手間がかかる

自己破産をするときは、一定の価値がある財産(不動産や車など)を手放さなければならない場合があります
とはいえ、生活保護受給者はもともと大きな資産を持っていないことが多いため(生活保護を受給する際に審査されます)、実際に処分すべき財産がないケースがほとんどと思われます

また、自己破産の手続きには書類の収集や裁判所とのやり取りなど、一定の手間と時間がかかります
必要書類(収入証明や債権者一覧など)の作成は、弁護士に依頼することでスムーズに進む場合が多いです
弁護士等専門家に依頼する場合には当然費用がかかりますが、費用に関しては後述の「法テラス」などの利用を検討してください

官報に名前が掲載される

自己破産をすると、官報という国の機関紙に氏名や住所が掲載されます
これを見られることで周囲の人に知られてしまうのではないかと不安に感じる方もいるでしょう
しかし、官報をわざわざ日常的にチェックする一般の人はごく限られています
多くのケースで、家族や友人・知人に知られる可能性は低いと言えます

クレジットやローンの利用が制限される

自己破産をすると、一定期間いわゆる「ブラックリスト」に載るため、クレジットカードやローンの新規契約が難しくなります
具体的には、信用情報機関に登録される「事故情報」の影響で、5~10年程度は金融機関から融資を受けられない可能性が高いです
ただし、生活保護を受給している状況では、もともとローンやクレジットカードの利用審査は厳しいケースが多いため、あまり現実的なデメリットとは感じない方も多いと考えられます
さらに言えば、借金を負ったまま生活保護を受給しているということは、自己破産をする前に借金の支払ができなくなっているということですので、既に事故情報が登録されている場合も多いです
むしろ、しばらく借金ができなくなることは、今後借金をこれ以上増やさないための「安全策」と捉えることもできます

メリット・デメリットを踏まえた結論 「生活保護受給で負債がある場合、自己破産を積極的に検討すべき」

以上のように、自己破産には「借金がゼロになる」「返済計画不要」「精神的負担の軽減」というメリットがある一方、「官報公告」「クレジット・ローンが利用できない」「手続きに手間がかかる」などのデメリットがあります
しかし、生活保護を受給しているほど経済的に困窮している場合、借金返済の選択肢はもはや残されていないことが多いでしょう
結論として、生活保護受給者が借金を返済できない状況に陥っているのであれば、自己破産を積極的に検討すべきと言えます

以下の理由が挙げられます

返済の余裕がない状態

生活保護の給付額は、あくまで最低限度の生活を保障するレベルです
それを切り詰めて返済に回すことは生活保護の趣旨にも反することになりますし、自分自身の生活維持や健康管理に重大な支障をきたすおそれがあります
任意整理や個人再生は返済が前提ですが、実際に返済に回せる余裕がない以上、これらの手段を取ることができません

破産は生活保護の趣旨にかなう

生活保護は最低限の生活を保障する制度であり、その趣旨を踏まえれば、借金を返済するために生活が崩壊してしまうのは本末転倒です
自己破産で借金問題をクリアにし、生活保護による支援を自立への道標として活用するほうが建設的です

再スタートのチャンスを掴む

借金の問題をいつまでも抱えていては、心身ともに悪循環に陥る場合が少なくありません
自己破産によって一度リセットして、改めて自立への道筋を立てる方が、中長期的にはプラスに働くことが多いといえます

弁護士費用の問題と法テラスの活用

自己破産を進めるにあたり、心配になるのが弁護士費用や裁判所への申立費用です
生活保護受給中であれば、まとまったお金を支払うことは難しいかもしれません
しかし、以下のように法テラスの制度を活用することで費用面のハードルを大きく下げることができます

法テラス(日本司法支援センター)の費用立替制度

一定の所得や資産が基準以下の方に対して、弁護士費用や裁判所に支払う費用を立て替えてくれる制度です
後日、分割で償還する必要がありますが、生活保護受給者の場合は“償還免除”や“減額”が認められる可能性が高いです
こうした制度が利用できるかどうか、具体的には弁護士に相談することで確認できます
費用が心配だからといって自己破産を諦めるのではなく、まずは一歩踏み出してみましょう

生活保護受給と自己破産のメリット・デメリット まとめ

生活保護受給者が抱える借金問題は非常に深刻です
しかし、その状況下で任意整理や個人再生など、返済を伴う手段を選ぶのは現実的ではありません
返済が前提の手続きでは、生活保護の給付から支払うしかなく、生活そのものが成り立たなくなるリスクが大きいからです
そこで、借金の返済義務を免除し、人生を再スタートさせるための強力な制度が自己破産です

もちろん、自己破産には官報への掲載や信用情報への登録など、マイナス面も存在します
しかし、生活保護を受けるほど困窮している場合、そのようなデメリットは将来的なデメリットというよりも、むしろ「借金地獄から解放される」メリットの方がはるかに大きいといえます
借金を抱えたままでは、生活保護の目的である「自立支援」もままならず、負の連鎖から抜け出せない可能性が高いからです

もし借金の返済ができずに生活保護を受けている、あるいは近い将来に生活保護を申請する予定がある方は、一度法律の専門家に相談し、自己破産の可否を検討することを強くおすすめします
法テラスなどの公的な支援制度を活用すれば、費用面のハードルも下げられます
「借金から解放され、生活保護による最低限度の生活を安定させ、その後少しずつでも社会復帰を目指していく」
その道筋を描くためにも、自己破産は有力な選択肢であると言えます

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