経済的に困窮している人にとって、生活保護は「最後のセーフティネット」といわれる制度です
しかし、生活保護を受給しているからといって、債権者からの請求が一切免除されるわけではありません
場合によっては債権者から訴訟を起こされ、敗訴した結果として財産の差押を受ける可能性もあります
ここでは、生活保護受給中であっても訴えられる可能性や、実際に財産が差し押さえられるケース、そして差押を回避・対処するためのポイントについて解説します
経済的に厳しい状況にあるときほど、正確な知識と適切な対応が重要です
生活保護と裁判リスク
生活保護を受給しても債務は消えない
まず押さえておきたいのは、生活保護を受給しているからといって既存の債務(借金)が自動的に免除されるわけではないということです
貸金業者やクレジットカード会社は、契約上の債務が履行されない場合、通常の貸し倒れリスクとして処理するか、あるいは法的手段(訴訟)を取るかを判断します
生活保護受給の有無は、債権者が訴訟を起こすかどうかを左右する大きな要素ではありません
つまり、生活保護を受けている間も、返済を求める訴訟を起こされる可能性は十分に存在するのです
債権者が訴訟を起こす理由
通常、債権者は訴訟を起こすために弁護士費用や裁判費用などのコストを負担する必要があります
逆にいえば、それだけのコストをかけても回収の見込みがあると判断すれば、積極的に訴訟手続きに踏み切ることがあります
たとえば、
・まだ就労できる年齢や環境にあり、将来的な収入が見込まれる
・不動産や車などの価値ある財産を所有している
・生活保護の支給に加え、何らかの副収入がある
などが考えられる場合、訴訟を選択する債権者もいるのです
さらにいえば、債権者からの督促を放置している場合、債権者がそもそも生活保護受給中であることを知らずに訴訟を提起する場合もあります
生活保護を受給しているかどうかは外から見ても分からないですし、債権者に報告がいくわけでもないからです
生活保護受給中に裁判に負けるとどうなるか
支払義務が存在することが確定
訴訟を起こされると、裁判所が両者の主張や証拠を精査したうえで判決を下します
借金の事実や契約の違反が明確であれば、生活保護を受給していても被告(債務者)は敗訴し、支払義務を負うことになります
そして、敗訴判決が確定すると債権者は「強制執行」と呼ばれる手続きを通じて、相手の財産を差し押さえる権利を得ます
強制執行(差押え)の可能性
敗訴が確定した後、債権者は執行官に対して財産調査や差押を申し立てることができます
差押の対象となる財産として考えられるものとしては
・預貯金口座
・不動産
・自動車
・給与や年金などの定期収入
などが考えられます
もっとも、差押禁止財産・差押禁止債権というものもあります
たとえば生活必需品や最低限の生活を営むために必要な一定額の金銭は法律によって保護されます(次に述べる通り、生活保護費は差押禁止とされています)
とはいえ、預貯金や車、不動産など資産価値のあるものがあれば、執行対象になることは十分あり得るのです
生活保護費の差押は禁止されている
生活保護法第58条では、生活保護のために支給された金銭は差し押さえることができないと定められています
これは、国が最低限度の生活を保障する趣旨から、債権者の差押えを認めてしまうと生活そのものが破綻してしまうためです
そのため、生活保護費そのものが銀行口座に振り込まれていたとしても、そのお金が「生活保護の支給分である」と明確に区別できるのであれば、差押の対象にはなりません
ただ、生活保護費とそれ以外の入金や貯金が同一口座で混在していると、債権者や裁判所からは「保護費とは無関係な預金」と見なされる可能性もあります
口座情報や証拠資料を示し最終的には手元に戻して貰うことは可能ですが、この手続きには手間と時間がかかることがあるため注意が必要です
生活保護受給中に訴えられたらどうする?裁判への対処法
放置しないで早めに対応
訴状や督促状が届いても、「どうせお金がないから払えない」と放置してしまう方がいます
しかし、放置すると裁判所は債権者の主張だけをもとに欠席裁判で判決を下し、支払義務や財産差押がほぼ確実に認められてしまいます
まずは放置せず、書面をよく読み、対応方針を考えることが大切です
弁護士に相談
経済的に厳しい状況であっても、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度などを利用すれば、一定の収入や資産が基準以下の場合に弁護士費用を立て替えてもらえることがあります
生活保護受給者であれば、ほとんどの場合はその基準を満たすと考えられるため、まずは弁護士に相談し法テラスを利用する意向を伝えましょう
・訴訟の内容を精査し、争点があれば反論を準備する
・返済計画の策定や和解交渉に進む方法を検討する
・債務整理(自己破産や個人再生など)の可能性を探る
など、専門家とともに適切な手続きを取ることが望ましいです
自己破産手続で解決をはかる
生活保護を受給しているほど経済的に困窮している場合、任意整理や個人再生で返済を継続するのは現実的に難しいといえます
そのため、多額の借金があるときは、自己破産による免責を検討することが有効策となり得ます
自己破産によって裁判所から免責が認められると、原則として借金の返済義務はなくなり、債権者から差押を受けるリスクも回避できます
もちろん、自己破産にはデメリット(官報公告やクレジット・ローンの利用制限など)もあります
しかし、生活保護受給中に既存の債務を返すことが不可能に近いのであれば、早めに弁護士に相談して手続きを検討したほうが、結果的に生活再建の近道になります
生活再建に向けたポイント
家計管理と収支の見直し
裁判リスクや差押を受ける可能性を減らすためには、日頃の家計管理が重要です。生活保護費は最低限度の生活を維持するための金額しか支給されません
にもかかわらず生活を改めようとせずギャンブルや浪費を続けてしまうと借金問題が長引く原因になります
家計簿をつけて毎月の収支をきちんと把握し、生活保護の範囲で安定した家計を維持していく努力が必要です
可能な限り早い相談
借金問題は放置しても自然に消えることはありません。むしろ放置期間が長引くほど、遅延損害金などがかさんで債務が増大し、差押リスクも高まります
少しでも支払いが困難だと感じるなら、すぐに弁護士や司法書士、法テラスに相談することが大切です
生活保護を受給していても専門家に相談するハードルは低いため、積極的に活用しましょう
生活保護受給中の訴訟と自己破産について まとめ
生活保護は困窮している人の命綱となる大切な制度ですが、生活保護を受給していても既存の借金が帳消しになるわけではなく、債権者からの訴訟や差押リスクは残るという点を理解しておく必要があります
実際に訴訟を起こされ、敗訴が確定すれば、財産が差し押さえられる可能性があります
ただし、法律によって保護費自体の差押は禁止されているほか、最低限の生活必需品や一定額の現金も差押禁止財産として保護される場合があります
それでも、差押を巡るトラブルや手続きが発生すれば心身ともに大きな負担となります
最も重要なのは、放置せずに早めの段階で法律の専門家に相談し、適切な債務整理や手続きを検討することです
経済的に立ち行かない場合でも、法テラスの民事法律扶助制度を活用すれば、費用の面で弁護士への依頼が可能になるかもしれません
また、自己破産などで免責を受ければ、借金から解放され、生活保護による最低限度の生活から自立を目指す一歩を踏み出せる可能性が高まります
困ったときはひとりで抱え込まず、専門家に力を借りながら問題を解決していきましょう